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所長メッセージ

2021/03/11
桜の花見は梅の木ではできない


 寒さも少しずつ和らぎ、梅の花がきれいに咲く季節になりました。近くの公園には梅林があり、いろいろな梅の花を楽しむことができます。美しさだけでなく、香ばしくもあり、周りの雰囲気を和らげます。梅の木がたくさんある中に、一目すると桜ではないのかと思うほどの梅花があります。この時期に早咲きの桜もあることから間違えやすいのです。花弁の色や枚数も桜にそっくりです。どれだけ丁寧に眺めて観察しても、私の知識と視力では区別がつきません。
 そのようなときには、花弁ではなく、枝を観察すると違いを理解できます。梅の木は、一般的に幹から枝が直線的に突き出ており、枝別れ部分からも直線的に延びています。一方、桜の場合は途中で屈曲する枝は少なく、枝の延び方も緩やかな円弧を描いた、しなやかさを感じます。梅の枝を直線的な剛直とすれば、桜は柔軟という言葉で例えることができます。花弁のように表面を観察するのでは区別ができない場合にも、それを支える枝まで戻って基本的部分を観察することにより、違いや区別ができるのは私たちの身近にも多くの事例があります。
 日常の病気や健康においても、同様な経験が多くあります。花粉症による鼻水で毎年同時期に苦労している場合に、特定時期に症状が出ると花粉症なのか風邪を引いたのか区別できない場合があります。そのような折には、鼻水に加えて発熱や咳があるかないかなどの自己診断により、感冒を花粉症と区別し、迅速な処置ができることがあります。
 場面は変わりますが、自動車を運転していると、タイヤの溝に小石が挟まり、タイヤの回転ごとに小石が路面を打つ異音が生じます。小石がタイヤに挟まっても大事故にはならないので、目的地へ到着してから調べればよいとの判断になりがちです。しかし、この異音はタイヤがパンクしたまま走行している場合と似ていることがあり、その場合には早期のタイヤ交換が必要です。パンク状態での走行は、ブレーキ性能低下や、カーブ走行時の車両の横滑りを伴いますので、注意して観察すると小石の場合とは区別できます。
 別例として、製品の売り上げが芳しくない折に、昨年の同時期と同じ傾向だからとか、偶発的原因だからだとか、さらには昨今のコロナ禍が原因だとか、自社以外の原因によるものだと思いがちです。しかし、売上低下が実は、自社製品の性能についての問題や、他社製品との競争力低下などの別原因の場合があります。そのための区別は、売上げグラフの変動周期や変動の高低差を比較したり、代理店のヒアリングやクレーム情報を分析したりすることにより、問題のある異常値だと判断できることがあります。
 私たちは、感じることができる表面の情報が同じ場合に、すべて同じ原因や結果であると思いがちですが、実はその裏に隠れている多くの基本的な重大情報を見落しがちです。桜に似た梅の木の下では、桜の季節に花見は出来ませんので、幹や枝を見て、間違わないようにすることが肝心だと思いました。
 
太陽国際特許事務所
会長 中島 淳