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「ノウハウと特許の使い分け」シリーズ
  第1回 ノウハウ漏洩が会社をつぶす

2020/04/30(更新:2020/11/13)

 あなたの会社で、有用な技術情報がある場合に、これを特許で守るか、特許を出願しないで、ノウハウとして秘密に扱い保存し続けるかは、重要な判断事項です。

1.ノウハウとは

 ノウハウとは、企業秘密といわれる、製造や販売などで価値のある重要な秘密情報を言います。技術的なノウハウのなかで、新しく優れたもので発明に該当するものは、特許を出願すれば特許権を得ることができます。特許出願して特許権となれば、他社の実施を禁止する独占権を得られますが、審査がありますので、すべての出願発明が特許として認められるわけではありません。特許出願をすればその発明は公開されますので、他社がその内容を知ることとなります。ノウハウは、秘密保持体制を十分に維持すれば社外に漏れることはないのですが、一度でも社外に秘密が漏れると、模倣を止めることは出来ず自社製品の模倣品が市場に溢れる原因になってしまいます。

2.ノウハウの漏洩

 自社のノウハウを、秘密状態に保持し続けることができれば、かなりの強力な競争力となります。しかし、現実問題として社内秘密情報が完璧に社外へ漏れ出ないようにするのは大変難しいものです。ライバル企業はあの手この手で、対象企業の技術情報を入手しようとします。有名な例として、日本の半導体企業の製造技術情報が、自社の現職社員たちによって韓国など海外のライバル企業へ大規模に漏れ出した結果、日本の半導体企業の競争力は大幅に低下し、現在の惨状につながる原因となりました。獅子身中の虫という言葉がありますが、社員が自分の会社がつぶれる可能性のある背信行為をしていたのですから、信じられないことです。
 最近でも、製鉄企業の最新鋼板製造技術や、電気メーカーのメモリ製造技術が、社員や産業スパイによって海外企業へ違法に技術漏洩されて、日本企業が大きな損害を被った有名な秘密漏洩事件が報道されています。
 人類は太古の昔から、他人の技術を模倣したり盗んだりするのが常習的でした。これによって、人類は発展してきたとも言えます。このような、法制度が充実していない時代では貴重な技術を盗用されても泣き寝入りするしかないわけですが、特許法や不正競争防止法などの模倣対応への法律が多数存在する現代では、これらを十分に活用して、最適な対応をすることができます。

3.ノウハウの秘匿の実情

 現実問題として、各社の有用なノウハウは適切に秘密保持されているとは言えない状況です。十分な対応をするためには、特許などの各種法律の有効な選択利用のほかに、社内の秘密保持体制や諸規則の充実、社員教育指導体制の導入、社外との対応や契約の遵守など、実行するべき事項が多くあります。この連載シリーズでは、これらについて、それぞれ解説しますので、これを利用して社内体制を整備充実するように望んでいます。

次回予告

 「ノウハウと特許の使い分け」シリーズは全部で10回です。次回の第2回は、「あなたの会社にも必ずノウハウがあります」ですので、ご期待下さい。


 
記事担当者:知財ソリューション部
 
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