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「ノウハウと特許の使い分け」シリーズ
  第3回 特許出願をすると危険な場合とは?

2020/07/10(更新:2020/11/13)

1.特許出願の内容は公開されます

 新製品の技術開発で発明が生まれた場合には、先ずは特許出願をして自社の技術を守るというのが知的財産戦略の基本です。その意味では、新しいアイデアを考えた場合に、特許出願を考える対応は基本的に間違いではありません。
 しかし、特許出願しても得にならないこともあります。特許出願の内容は、1年半後にすべてが公開されるのはご存知のとおりです。ライバル企業は、特許出願したあなたのアイデアを1年半後に知ることが出来るわけです。このため、公開されたあなたのアイデアを模倣して製品を製造販売する可能性があるわけです。ところが、特許出願したアイデアが特許になれば、ライバル企業は特許権を侵害することになるので実施できず、我が社は製造販売を独占できるわけです。

2.審査で拒絶されれば公開された技術は守れません

 このような特許成功物語は、出願が特許庁で審査を経て特許として登録されないと実現できません。特許庁の審査で合格せずに拒絶になってしまったらどうでしょう。特許権は無く、出願したアイデアは公開されています。ライバル企業からすれば、特許出願したアイデア内容を知ることができ、その製品は合法的に自由に製造販売できることになります。
 このような状況から学習できることは何でしょうか。特許出願しても特許にならなかったら、止むを得ない。得るものはゼロだから損も得もないとの考えは間違いで、手間ひまを掛けた結果にライバル企業にアイデアを無料で知らせるというマイナスの結果です。有益なアイデアであればあるほど、高額費用を費やした特許出願などしなければ良かったことになります。製品製造のためには有益なアイデアであっても、それだけで特許になる可能性が高いということはありません。
 特許出願をすることはもちろん極めて大切なことですが、それだけが目的になっている場合があります。特許出願した後の特許庁審査をパスして特許権として登録され、ライバル企業の模倣を排除し独占的に製品を販売することによりビジネスに貢献するのが大切です。特許出願しても特許にならない場合にはマイナスのリスクがあることを十分に覚悟する必要があります。

3.特許出願するかしないかの利害判断が大切です

 それでは、特許出願したアイデアが見事に特許として登録されれば、すべて問題なしでしょうか。自社に特有の優れたアイデアでも、それがノウハウや秘密技術に属する場合はどうでしょうか。販売した製品を見たり分析したりしても、製造方法などがわからない技術について、わざわざ特許出願して特許権になっても有益でない場合があります。ライバル企業は特許出願された内容を公開公報などから知ることができるので、それを盗用して製品を販売した場合はどうでしょう。あなたは、そのライバル企業の販売製品を見て、自分の特許権の侵害だと思っても、それを証明するのは容易ではありません。製品を見てもアイデアを分析されない場合には特許出願しない戦略も考える必要があります。


 
記事担当者:知財ソリューション部
 
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