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「ノウハウと特許の使い分け」シリーズ
  第10回(最終回) 社内ノウハウの見付け方

2021/04/02

1.見えないものが大切

 このシリーズも、今回が最終回です。繰り返しですが、社内の重要なノウハウはイメージ化や文書化されておらず、社員の頭脳の中に存在するものが数多くあります。企業のM&Aにおいても、買収先企業の強みは製造設備や販売網ではなく、その製造設備や流通を動かす社員のノウハウなどの目に見えない知的財産です。
 会社の運営が順調に日々進んでいると、会社が自動的に動いているように思いがちですが、社員は毎日苦労して会社を動かしています。社員が会社を動かし、問題に対処するスキルは社員のノウハウです。社員のノウハウは軽視されがちですが、有能な社員が退職すると対処能力が極端に低下するのは良くあることです。大きな事故が発生した場合の裏には、このような事情がある場合も多く見受けられます。当然のように物事が進行していると、大切なものが見過ごされがちになります。

2.他人だと見えやすいノウハウ

 自社の大切なノウハウは、設計、製造、販売、メンテナンスなどの各段階において存在しますので、段階ごとに何が大切なノウハウかを重要度ごとにまとめて把握しておきます。重要度ごとに洗い出した項目は、誰が管理しているのか、アクセスできるのかを定めます。伝承についての将来計画も必要です。
 自社の各種ノウハウについては、自主的に明確にしておく必要があります。自社の強力なノウハウを自分たちで十分に認識して保護する体制です。しかし、同時に他人の目線でノウハウを確認することも大切です。自分たちは当然と思っている製造技術も他人から見ると、なぜにその構造なのか、どのようにして製造しているのかが理解できないものです。
 他社の製品について、常にこのようなリバースエンジニアを心がけることでノウハウ発見力が高まります。紛争処理の場面でクロスライセンスがありますが、ライバル会社から要求される自社の知的財産は予想と全く異なるものである場合がよくあります。自社でさほど重要視していないノウハウが実は他社にとっては極めて重要である証です。これから判断できる工夫として、社外の専門家にこのようなノウハウを見つけてもらうことも効果的ですし、さらなるノウハウ蓄積のきっかけにもなります。

3.ノウハウ保護のまとめ

 今までに、社内ノウハウの大切さと、その保護対策を説明してきました。社内の重要なノウハウを創り出し、蓄積し、保護し、会社を維持発展させるには社員の意識と意欲が大切です。そのような環境を創り出すのが、会社にとって最も大切なことです。


 
記事担当者:知財ソリューション部
 
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