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欧州特許庁による部分優先の判断基準の提示
 
2017.01.25

欧州特許庁による部分優先の判断基準の提示(毒入り優先権・分割出願)

   優先権主張の基礎出願に記載のない事項を含む欧州特許出願を分割出願した際に生じうる問題(いわゆる「Poisonous Priority(毒入り優先権)」・「Poisonous Divisional(毒入り分割出願)」)を取り上げた事件(G1/15)について、2016年11月29日付けで欧州特許庁拡大審判部より指令が発行されました。以下にその要旨をご紹介します。

背景
   優先権の基礎とする出願に記載のない事項を含む欧州特許出願を分割出願した場合に、当該分割出願に基づいてその親出願自体が拒絶されてしまう問題、いわゆる「毒入り分割出願」は、例えば次のような状況で成立していました。以下、日本出願を優先権の基礎とする場合について説明いたします。

@ 日本において、A’を開示する特許出願を行う
A A’を開示する基礎出願に対して優先権を主張して、A’を上位概念化したA(即ち、AはA’を内包)をクレームした欧州出願(EP親)を行う
B 当該欧州出願を親として、A’をクレームした分割出願(EP分割)を行う

   A’をクレームしたEP分割出願についてはA’を開示する基礎出願の優先権の利益が与えられます。しかしながら、基礎出願に記載されていない事項を含むAをクレームしたEP親出願は、基礎出願の優先権の利益を受けられません。そのため、拡大先願(EPC54条(3))に基づいてEP分割出願がEP親出願の新規性を否定する引用例となり、結果として分割出願によってその親出願が拒絶されるという問題が生じておりました。

拡大審判部に付託されていた質問
   上述の状況に関して、以下の質問が欧州特許庁の拡大審判部に付託されていました(ほかにも質問が付託されておりましたが、下記質問への指令によりその意義を失ったことから、ここでは省略いたします)。

質問:
EP出願またはEP特許の請求項が、1または2以上の包括的表現、その他の表現を用いることによって、択一的な主題を包含するものである場合(包括的「OR」請求項に該当する場合)、優先権書類において最初に、直接的に、若しくは少なくとも暗示的に、かつ明瞭に(実施可能な態様で)記載された択一的な主題に関して、EPCの規定の下では部分優先の有効性が否定されるのか?
拡大審判部の指令
   上記質問に対して拡大審判部は2016年11月29日付けで以下の指令を発行しました。
指令:
欧州特許条約(EPC)の下では、択一的な主題を包含する請求項について、当該択一的な主題が、最初に、直接的に、若しくは少なくとも黙示的に、明瞭かつ実施可能な態様で優先権書類に記載されていた場合には、1または2以上の包括的表現その他の表現を含む(包括的「OR」請求項に該当する)ことに起因して、部分優先は否定されない。この点に関し、他の実質的な条件または制限は適用されない。
指令がもたらす影響
   拡大審判部による指令を上述の例に当てはめると以下のようになると考えられます。EP親出願においてクレームされたAは概念的にA’とA−A’(AからA’を除外した部分)とに分けられます。A’については基礎出願の優先権の利益を得られます。他方、A−A’については優先権の利益は得られないものの、EP分割出願の明細書中にA’に関する開示しか存在しないことから、EP分割出願に基づく拡大先願により新規性を否定されることはないという結果となると予想されます。
   即ち、拡大審判部によって上記質問への回答として「NO」が示されたことになり、いわゆる「毒入り」のスキームの成立は制限される方向になると考えられます。

   また、今回の拡大審判部の指令は、いわゆる「毒入り」のスキームに対してのみならず、引用文献の公表日が優先日以後であり欧州出願日前である文献(中間文献)の取り扱いに対しても、影響を及ぼす可能性があると考えられます。

2016年11月29日付けで拡大審判部より発令された指令の詳細は、( https://register.epo.org/application?documentId=EZRVZZP16932684&number=EP98203458&lng=en&npl=false )をご覧ください。




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≪お問い合わせ先≫
特許業務法人太陽国際特許事務所 外国情報グループ 欧州チーム