2012年3月に米国にて二つの注目すべき判例が出されましたので、以下に報告いたします。
1.特許対象主題に関する米国連邦最高裁判決(Mayo Collaborative Services v. Prometheus Laboratories)
米国連邦最高裁は、ビジネス方法に関するBilski v. Kappos事件において、Bilski特許のクレームは特許可能な主題ではないとの判決を下しています(2010年6月28日)。この度、同様に、治療計画作成のための判定方法に関するMayo Collaborative Services v. Prometheus Laboratories事件において、Prometheus特許は特許可能な主題ではないとの判決が下されました(2012年3月20日)。
まず、Prometheus特許のクレームの概略は、(a)患者の体内で特定の代謝物に代謝される特定の合成薬を患者に投与すること、(b)前記特定の代謝物の量を測定すること、を含む特定疾患の治療有効性を最適化する方法であって、得られた代謝物の量が合成薬の投与量を増減させる必要性の有無を示唆する 、というものです。CAFC(連邦巡回高等裁判所)における控訴審では、(a)及び(b)のステップは実際に「変換」を伴うステップであるので、単に自然現象をクレームしたものではなく、特許対象となると判断されたものの、連邦最高裁は以下のように指摘してこの解釈を否定しました。すなわち、下線部はクレームの実質的なステップではなく、単に自然現象であり、(a)は以前から行われてきた前提条件を記載したに過ぎず、(b)は具体的なプロセスの特定が無い周知慣用のステップに過ぎないので、これらによってクレームを特許可能な対象とすることは出来ないと述べました。また、「特定疾患の治療有効性を最適化する」というプレアンブル部分の記載は重視されませんでした。
このように、「投与」や「測定」といった一見積極的なステップを記載していても、それが公知・非限定のものであれば診断・判定方法を必ずしも特許対象とするものではない、と判断されておりますので、今後はこの種の診断・判定方法について出願する際に注意が必要となります。1つの対策としては、単に自然現象自体をクレームしたものとの解釈を避けるために、最終的に得られた情報を用いて何らかの積極的なステップ(例えば薬剤投与)を行うことまで記載することが考えられます。また、上記下線部はwherein節内に記載されておりますが、判定部分についての記載が自然現象そのものを記載したものと見られがちであるため、このような記載形式を取ることは避けることが考えられます。
2.IDS開示義務に関するTherasense, Inc. v. Bectonの続報
Therasense, Inc. v. Becton事件においては、連邦地裁における差し戻し審において、対応ヨーロッパ出願においてした陳述を米国特許商標庁にIDSとして提出しなかったことが不公正行為に該当するとの認定が再度なされました(2012年3月27日)。
(1)事件の背景
Therasense特許においては、米国での審査の最終段階で提出した宣誓書に記載された内容が、その数年前に対応ヨーロッパ出願で行った陳述と矛盾していたにも関わらず当該ヨーロッパ出願における陳述をIDSとして提出しなかった点が、不公正行為に該当するかどうかが争点となっていました。連邦地裁において不公正行為が認定され、その結果権利行使不能との判決が一旦出されました。その後のCAFCにおける控訴審では、連邦地裁における不公正行為の判断基準が不当と判断され(2011年5月25日)、事件は連邦地裁に差し戻されました。
(2)差し戻し審の判決
上記CAFCにおける控訴審では、(i)開示されなかった情報の関連性(情報開示があったならば特許許可されなかったであろうこと)及び(ii)米国特許商標庁を欺く意図(当該情報を知っており、当該情報が上記関連性を有することを知っており、米国特許商標庁を欺くために当該情報を隠そうと意図的に決断したこと)の両方の立証が必要とされました。
これに対し、本件の場合は特に「欺く意図」の有無が争点となりましたが、差し戻し審の判決(2012年3月27日)では、状況から「欺く意図」に関する上記要件は充足されていると判断され、CAFCによる改訂後の基準に基づいても不公正行為が認定できるとの結論がなされています。
上記のように、改訂後の基準に基づいても依然として裁判所が不公正行為を認定する事例があるため、不公正行為とみなされるような行為は従来通り避けることが重要です。例えば、Therasense事件で見られたように、米国外のファミリー出願において、米国出願の審査においてした主張と矛盾した陳述を行ったりした場合には、当該情報の開示義務が生じるおそれがありますので、注意が必要となります。
本件に関し、ご不明な点などございましたら下記までお問合せください。
≪お問合先≫
外国本部 特許部 桐内 優
(
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