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中国において商標「iPad」の権利をめぐり様々な紛争が勃発しています。差止請求訴訟なども提起されているようで、その結果、一部の省の店頭から米国Apple社の商品"iPad"が姿を消したと報道されたのは記憶に新しいところでしょう。
この紛争の背景には複数企業による商標権の取得や商標権の移転など複雑な問題が絡んでいるようで、どの企業が正当な権利者といえるか問題の所在となっているようですが、問題のツボは、中国における商標「iPad」(登録1590557号)の権利者は広東省深圳所在の唯冠科技術(深圳)有限公司となっている点にあります。そして、唯冠科技術(深圳)有限公司によるApple社に対する権利行使は認められるかどうかが争点となっています。
「iPad」が商品化されたのは2010年ですが、報道内容等から推察しますと2006年頃より商品開発に着手したようです。冠科技術(深圳)有限公司が商標「iPad」を出願したのは2000年1月ですので、「iPad」が市場に出回るよりも以前に商標登録出願を行っていたことになります。「iPad」という商品が将来的にブームになることを見越しての出願であったかどうか知る由もありませんが、仮にそうであるなら、冠科技術(深圳)有限公司にはある種の“先見の明”があったといえるのかもしれません。
しかし、商標登録を受けるにあたっては将来的に商標を「使用」する予定があることが前提とされています。このため登録後一定期間(国によりますがほとんどの場合3年間)商標が不使用状態にある場合には、第三者が登録の取消を求めることができる制度が通常用意されています。ということは、冠科技術(深圳)有限公司が商標「iPad」について登録を得たとしても、実際に商標「iPad」を使用しない限り、いつ何時登録の取消を求められても不思議ではなく、非常に不安定な状態にあるといえるのです。
現在問題となっている商標「iPad」に係る登録(登録1590557号)のステータスを見てみますと、商標が不使用状態にあったことを理由とする取消審判が請求されている模様です。このことを踏まえますと、取消審判の行方及び不使用状態の商標に基づいた商標権の行使の有効性の点が、今回の紛争の行方を左右する要素となるでしょう。
弊所コラムで何度かご紹介しましたように、中国をはじめとする一部の国・地域においては、いわゆる「抜け駆け商標登録出願」が頻繁に行われています。Apple社もこのような行為に対し手を拱いていたとは思いませんが、今回は「想定」を超える事態にまで発展してしまったのかもしれません。このような国・地域において将来的にビジネスを展開する予定がある場合、自社商品・自社名等の重要商標については、商標及び商品・役務を一定程度類似の範囲まで広げて商標登録出願を行い権利化し、不要な争いが生じないようあらかじめ対策を講じておくことが何よりも大事です。
ちなみに、中国商標局のHPによれば “APAD”や“XPAD”などの商標もコンピューター関連の商品について登録されているようです。これらの商標が更なる事件を引き起こし、第2・第3の「iPad事件」が発生しないことを祈るばかりです。
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