【中国】専利法実施細則の第三回改正
2024/01/12
【中国】専利法実施細則の第三回改正
2023年12月11日に中国国務院により専利法実施細則の改正が決定され、この決定に基づいて第三回改正専利法実施細則が2023年12月21日に公表されました。2024年1月20日より施行されます。
今回の主な改正事項は以下のようになっています。
1.優先権主張期間を徒過した場合の権利回復
- 国内優先権/外国優先権の優先権主張期間を徒過した後で行う特許出願及び実用新案出願について、正当な理由がある場合、優先権主張期間の満了日から2か月以内に、優先権の回復を請求できるようになりました(第36条)。
- PCT出願について、優先権主張期間の満了日から2か月以内に国際出願し、受理局が優先権の回復を認めた場合、中国においても優先権の回復を請求したとみなされるとともに、国際段階で優先権の回復を請求しなかった、或いは請求が認められなかった場合であっても、正当な理由があれば、中国国内段階の移行日から2か月以内に優先権の回復を請求できるようになりました(第128条)。
2.優先権主張の追加・訂正
- 国内優先権/外国優先権を主張した特許出願及び実用新案出願について、優先日から16か月以内又は出願日から4か月以内に、優先権主張の追加・訂正を請求できるようになりました(第37条)。
3.優先権基礎出願の援用による補正
- 出願書類の提出日に国内優先権又は外国優先権を主張した特許出願及び実用新案出願について、その提出日から2か月以内に、又は国務院専利行政部門により指定された期間内に、優先権基礎出願を援用して出願書類を補正できるようになりました(第45条)。
4.電子データの送付書類についての15日後の受領推定の廃止
- 電子データとして送付される各種書類について、当事者の承認した電子システムに到達した日(通常は書類の発行日)を送達日とし、15日の受領推定期間が加算されなくなりました(第4条)。
5.外国出願人が自ら可能な手続き
- 外国出願人/権利者は、中国代理人を通さず、自身で、優先権基礎出願の書類の提出、料金の納付、国務院専利行政部門より規定されるその他の手続きを行うことができるようになりました(第18条)。
6.部分意匠出願の出願書類の明確化
- 部分意匠出願の際には、物品全体の図面を提出し、破線と実線の組み合わせ又はその他の方式によって保護を求める部分を表示しなければならないことが明記されました(第30条)。
- 物品全体の図面において破線と実線の組み合わせによって保護を求める部分を表示した場合を除き、意匠の簡単な説明において、保護を求める部分を記載しなければならないことが明記されました(第31条)。
7.意匠出願の国内優先権主張制度の整備
- 意匠出願について、意匠出願に基づく国内優先権主張の他に、特許出願又は実用新案出願の図面に示された設計に基づく国内優先権主張も可能であり、この場合、優先権主張の基礎となる特許出願又は実用新案出願のみなし取り下げにならないことが明記されました(第35条)。
8.実用新案及び意匠の審査強化
- 実用新案出願の審査項目には、明らかに進歩性を具備していないか、意匠出願の審査項目には、明らかに従来設計又は従来設計の特徴の組み合わせとの明白な区別を具備していないかについても含まれるようになりました(第50条)。
9.遅延審査制度の明確化
- 特許、実用新案及び意匠出願に対して、遅延審査を請求できることが明記されました(第56条)。
10.不服審判請求期間を徒過した場合の権利回復
- 不服審判請求期間を徒過した場合、正当な理由があれば、請求期間の満了日から2か月以内に権利の回復を請求できることが明記されました(第6条)。
11.信義誠実の原則の導入
- 出願は、信義誠実の原則に従い、真の発明・創造活動に基づくべきであって、虚偽があってはならないことが明記されました(第11条)。
- 信義誠実の原則を違反した場合、拒絶理由及び無効理由になることが明記されました(第50条、第59条、第69条)。
- 信義誠実の原則を違反した場合、10万元以下の罰金を科すことができることが明記されました(第100条)。
12.実用新案・意匠の技術評価書の請求者及び請求時期の拡張
- 登録公告の後、権利者や利害関係人の他に、被疑侵害者も技術評価書を請求できるとともに、実用新案又は意匠の出願人は登録手続きを行う際にも、技術評価書を請求できるようになりました(第62条)。
13.不合理的な遅延による特許権の存続期間の延長
- 特許出願の日から起算して4年を経過し、かつ実体審査の請求があった日から3年を経過した日以後に特許権が付与された特許出願について、特許権の登録公告日から3か月以内に、不合理的な遅延による存続期間の延長を請求できることが明記されました(第77条)。
- 延長可能期間は、不合理的な遅延による実際の遅延日数に従い、「特許出願の日から起算して4年を経過し、かつ実体審査の請求があった日から3年を経過した日から登録公告日までの日数」から「合理的な遅延日数」及び「出願人による不合理な遅延日数」を引いたものになります(第78条)。
- 特許・実用新案の同日出願制度を利用し、実用新案権の放棄により特許権を取得した場合は、適用外になります(第78条)。
14.新薬の薬事承認による特許権の存続期間の延長
- 新薬に関する特許は、中国での市販承認を受けた日から3か月以内に、薬事承認による存続期間の延長を請求できることが明記されました(第81条)。
- 延長可能期間は、「特許出願の日から中国での市販承認を受けた日までの日数」から「5年」を引いたものに従い、市販承認を受けた日からの合計存続期間が14年を超えない範囲で、5年間を上限として認められます(第82条)。
15.開放許諾制度の詳細規定
- 権利者は、登録公告の後に開放許諾声明を提出することが明記されました(第85条)。
- 独占的実施権設定、年金未納、質権設定等の場合、開放許諾の声明ができないことが明記されました(第86条)。
- 開放許諾により実施許諾契約を締結した場合、権利者又は被許諾者が、国務院専利行政部門に届出をする義務があることが明記されました(第87条)。
16.国際意匠出願に関する特別規定の追加
- 2022年2月にハーグ協定に加盟したことに応じて、ハーグ協定に基づく国際意匠出願に関する国内の手続きや審査などの詳細規定が設けられました(第136~144条)。
国務院による《中華人民共和国専利法実施細則》の改正に関する決定
https://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/202312/content_6921634.htm
記事担当者:外国情報グループ アジアチーム(中国担当) 中国弁理士 孫 桂江
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