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商標法改正のご案内
コンセント制度の導入、他人の氏名を含む商標の登録要件の緩和~

2024/06/25

2024年4月1日より日本国商標法の一部が改正されましたので、以下ご案内します。

1.コンセント制度(留保型コンセント制度)の導入

商標法では、他人の登録商標(以下「先行登録商標」といいます)またはこれに類似する商標で同一または類似する指定商品や指定役務について商標登録出願をした場合、商標登録を受けることができないのが原則です(商標法第4条第1項第11号)。
他国及び地域では、審査において先行登録商標が存在していても、当該先行登録商標の権利者による同意(コンセント)がある場合などに並存登録を認める制度(コンセント制度)が採用されている場合があります。一方、日本では当事者間で合意がなされただけでは、商品または役務の出所について誤認や混同するおそれが排除できないなどの理由から、コンセント制度の導入は見送られてきました。
しかしながら、ブランド選択の幅を広げる可能性を高める必要性や国際的な制度調和の観点から2023年の法改正でコンセント制度が導入されることとなりました。ただし、先行登録商標の権利者による同意があっても出所混同のおそれがある場合には登録を認めないとする「留保型コンセント制度」として導入されています。
今回の改正により、自己の商標出願が商標法第4条第1項第11号に該当する商標であっても、先行登録商標権者の承諾を得ており、かつ、先行登録商標と出願商標(以下「両商標」といいます。)との間で混同を生ずるおそれがないものについては、登録が認められることとなります。混同を生ずるおそれに該当するか否かは、両商標の類似の程度や商標の使用態様その他取引の実情等、両商標に関する具体的な事情を総合的に考慮して判断されます。具体的な事情としては、商標の周知度や識別力の程度(商標が造語からなるものか、構成上顕著な特徴を有するか)、商標がハウスマークであるか否か、企業における多角経営の可能性などが考慮されます。
なお、登録後に出所の混同が生じる場合は、混同防止表示を請求することや、不正使用取消審判を請求することも可能です。

2.他人の氏名を含む商標の登録要件の緩和

従来、商標構成中に他人の氏名を含むものは、出願に係る商標や他人の氏名の知名度等にかかわらず、同姓同名の他人全員の承諾が得られなければ商標登録を受けることができませんでした。同姓同名の他人が存在すれば、広く一般に知られたブランドまで一律に出願を拒絶せざるを得ません。そのため、創業者やデザイナー等の氏名をブランド名に用いることの多いファッション業界などからの強い要望を受け、2023年の改正で他人の氏名を含む商標についての登録要件(商標法第4条第1項第8号)が緩和されることになりました。
今回の改正では、以下の要件を満たす商標出願については、他人の氏名を含む商標であっても、他人の承諾無しに商標登録を受けられるようになりました(下図参照)。

    • 氏名に一定の知名度(商標の使用をする商品又は役務の分野において周知性)を有する他人が存在しないこと
    • 商標の構成中に含まれる氏名と商標登録出願人との間に相当の関連性があること
      相当の関連性の具体例:出願人の自己氏名、創業者や代表者の氏名
    • 商標登録を受けることに不正の目的がないこと

 
※氏名に一定の知名度を有する他人が存在する場合は、その他人の承諾が必要です。
※「他人」とは、自己以外の現存する者をいい、自然人(外国人を含む。)、法人のみならず、 権利能力なき社団を含みます。
 
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記事担当者:意匠商標室
 
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