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江崎グリコ株式会社のチョコレート菓子が立体商標として登録されました

2025/11/06

立体商標制度とは

立体商標とは、文字やロゴだけでなく、商品の形状や包装等の立体的形状についても登録を受けることができる制度です。日本では1997年に導入され、導入からすでに28年が経過しました。導入当初は、ケンタッキーフライドチキンの店頭人形(登録第4170866号)や不二家の店頭人形(登録第4157614号及び登録第4157615号)といったキャラクター像が登録され、話題となりました。
制度導入以降、食品分野でも形状を対象とする出願が一定数見られるようになりましたが、登録を受けるには「識別力」(=その形状から商品や役務の出所がわかる力)が要求されます。特に、当該食品が商品の通常の形状の範囲にとどまると判断される場合は識別力が否定されやすく、純粋な形状のみでの登録例は依然としてごく少数にとどまっています。

グリコのスティック形状チョコレート菓子‐立体商標登録への挑戦

江崎グリコ株式会社(以下、「グリコ」)は主力商品の一つであるスティック形状チョコレート菓子(一般には「ポッキー」の名称で知られているもの。なお、「ポッキー」は江崎グリコ株式会社の登録商標です)について、指定商品「洋菓子」等を対象に、立体商標としての商標出願を行いました。本件は、商品の形そのものを商標として保護しようとする試みであり、その形状の識別力が審査上の主要な論点となりました。

当該形状は「棒状のプレッツェルにチョコをコーティング」したもので、チョコレート菓子としては一見シンプルです。審査過程では、近似した形状の菓子が一般に流通している事情を踏まえ、識別力に疑義が示された拒絶理由が通知されました。
しかし、グリコは以下のような資料により識別力の獲得を丁寧に立証しました。
 

  • 国内市場での販売実績・シェア
    • チョコレートやチョコレート菓子分野における継続的な高い販売実績とシェアを裏付ける資料。
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  • 長年の販売と広告宣伝および多面的なプロモーション活動
    • 自社によるテレビCMなどの継続的な宣伝活動に加え、「ポッキー&プリッツの日」キャンペーン、他社とのコラボレーション企画、公式ウェブサイトやSNSを通じた情報発信など、多様な取組みにより形状認知を蓄積したことを示す資料。
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  • 消費者調査および形状の認知・周知性
    • 一般消費者1,036名を対象に実施されたアンケート調査において、9割超が「形状のみで当該菓子を認識できる」と回答した結果を示す資料や長年の販売や広告活動を通じ、形状が広く一般消費者に認識されていることを示す資料。

 
これらの立証により、当該形状が単なる菓子の形状を超えてグリコの商品であるという出所表示機能を果たすことが認められ、立体商標としての登録に至りました。

他の食品の立体商標と今後

食品の形状のみで立体商標として商標登録された例は極めて限られており、代表例として以下が挙げられます。

また、株式会社ロッテは六角形状のパイ菓子について商標登録出願中です。

本件と同様、識別力の立証が登録の可否の帰趨を左右すると考えられ、食品分野における形状のみの立体商標登録は、現状でもハードルが高い状況に変わりはありません。
今回の「スティック形状チョコレート菓子」に係る立体商標の登録は、食品分野では例外的な成功例といえます。むしろ、この登録に至るまでの長年の販売実績や広告の蓄積、さらに消費者調査などの膨大な立証活動があったからこそ実現したものであり、誰もが容易に同様の結果を得られるわけではありません。

まとめ

今回の「スティック形状チョコレート菓子」に係る登録例は、食品分野では珍しい成功例といえます。背景には、長年にわたる販売実績や広告活動、消費者調査を通じて、商品の形状が広く知られるようになったことについての丁寧な立証の積み重ねがありました。一方で、食品の形状そのものが識別力を持つと認められることは稀で、本事案も例外的なケースと言えます。それでも、形のデザインが商品を象徴し、ブランドを伝える力を持つことを示した点で、本件は大きな意味を持つ事例といえるでしょう。


 
記事担当者:意匠商標室
 
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