「ビッグデータ等の情報を保護する法制度の改正」
~不正競争防止法平成30年改正の概要~
2018/10/17
初めに
近年、いわゆるビッグデータの利用活用が活発化していますが、従来の法律ではビッグデータ等の保護が十分ではありませんでした。すなわち、従来では、顧客名簿などの秘密情報については不正競争防止法で保護され、著作物や創作性を有するデータベースについては著作権法で保護されていましたが、創作性を有さないデータベース(いわゆるビッグデータ)に関しては、法の保護対象にはなっていませんでした。
秘密情報 |
ビッグデータ等の自動集積される データベース(創作性を有さない) |
情報の選択又は体系的な構成によって 創作性を有するデータベース |
不正競争防止法により保護 | 保護する法律がなかった | 著作権法により保護 |
しかしながら、データは複写することが容易であるところ、創作性を有さないデータベースであっても、特定の契約者にのみ提供するような商業的価値があるものについては、法の保護対象とすべきです。そこで、ビッグデータ等の情報を保護する法制度が、不正競争防止法平成 30年改正においてなされました。
以下に、その概要を示します。
1.限定提供データに係る不正競争の新設(平成31年7月1日施行)
秘密情報に加えて、限定提供データを保護対象として加えました。
限定提供データの具体例としては、POSシステムで集計した商品毎の売り上げデータであって、契約者に限定して提供されるものが考えられます。
限定提供データの定義は、「業として特定の者に提供する情報として電磁的方法により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報(秘密として管理されているものを除く。)をいう。」(改正後2条7項)となっています。
また、限定提供データに係る不正取得・使用・開示の行為を規定しました。
2.技術的制限手段の効果を妨げる行為の範囲の見直し(平成30年11月29日施行)
①保護対象に情報(電磁的記録に記録された情報)の処理を追加しました。
例: 限定提供データ(ビッグデータ)の処理
②最新のプロテクト技術について明確化しました。
例:試用版を製品版へとする際のオンライン認証
③効果を妨げる指令符号の譲渡、提供等を追加しました。
例:認証コードの販売
④効果を妨げるサービスの提供を追加しました。
例:プロテクト破り代行サービス
3.書類提出命令に係る手続の拡充(平成31年7月1日施行)
インカメラ(※1)手続を規定しました。
(※1)インカメラ手続き:相手方に見せたくない文書等を、裁判所だけが見る方法により行われる非公開の審理。
参考
http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/H30nen_fukyohoshosai.pdf
記事担当者:法務・渉外室 中野 浩和
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