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ロシア・ウクライナ知財状況アップデート(2022年3月24日時点)

2022/03/18(更新日:2022/03/24)

ロシアが2022年2月24日に開始したウクライナへの軍事侵攻、及びその後のロシアに対する経済制裁に伴い、さまざまな影響が出ています。状況は刻々と変化していますが、現時点での状況について報告させていただきます。

1. 各国特許庁の動向

ロシア特許庁、ウクライナ特許庁及びユーラシア特許庁における出願受理や審査、登録に関して、停止や停滞の情報はいまのところありません。各特許庁は開庁し、稼働しているものと考えられます。
ウクライナ特許庁のウェブサイトでは、各国特許庁からの激励やサポートが紹介されているほか、ウクライナ特許庁の建物が職員の避難場所となっていることや職員の家族や近隣住民への食糧・医薬品支援の様子が紹介されています。
 
【ウクライナ特許庁HP】
 <Ukrpatent Everyday life of Ukrpatent is at the enterprise>
 https://ukrpatent.org/en/news/main/ukrpatent-budni-11032022-
 
2022年3月24日追記:
ウクライナ特許庁は開庁しているものの、首都キエフを含む全土に戦火が拡大している状況で、かなりの制約が課されているのが現実のようです。電子的な情報の交信は通常どおり可能なものの、郵送物は配達できず、庁費用の支払い処理についても制限があります。2022年2月24日に発令され、その後継続している戒厳令は不可抗力(force majeure)として取り扱う旨特許庁から発表されました。このため、戒厳令期間中に徒過した期限については、戒厳令が取り下げられた後に回復可能とのことです。
 
 

2. ロシア銀行のSWIFT排除

経済制裁の一環で、多くのロシア銀行が国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除され、これら銀行への送金ができない状況です。
 
 

3. ロシア・ベラルーシの団体・個人の資産凍結

日本を含む各国からの経済制裁として、ロシア及びベラルーシの団体や個人の資産凍結の措置がとられています。日本においては、対象となる個人及び団体がリスト化され、リスト上の個人及び団体に対して外国為替及び外国貿易法に基づく資産凍結措置が課されています。リストには、ロシア中央銀行ほかロシア及びベラルーシの複数の団体、並びに、プーチン大統領を始めとするロシアの政治リーダー及びロシアの新興財閥「オリガルヒ」などが掲載され、日々更新されています。
日本の各銀行はリストに基づき送金チェックを行います。さらに、海外経由銀行でも同様のチェックが(別の基準で)行われています。そのため、ロシア等への送金に関して遅延や停滞が発生する恐れのある状況となっています。
弊事務所でも、邦銀及び現地代理人との連携をとりながら確実な手続き及び権利確保に努めている状況です。
 
 

4. ロシアにおける強制実施権設定時の対価に関する決議

ロシア政府は、2022年3月7日、国家安全保障等のために権利者の同意なく特許権等を実施することをロシア政府が許可した場合(民法第1360条第1項)に実施者が支払う対価について、当該特許権者が非友好国(日本を含む)の国民である場合における対価の額を、特許権実施者の収益の0%とする決議が施行されました。
一見すると、日本企業が取得するロシア特許権について侵害し放題になってしまうのではないかと懸念されるような内容となっておりますが、法的には、いわゆる「強制実施権」が設定された場合に限定されるということです。
ロシア現地代理人からの情報は以下の通りです。

    • 強制実施権の設定は極めて限定的な場合(国防及び国家安全保障並びに住民の生命及び健康の保護に関連する極度な緊急時)にだけ設定され得るものです。強制実施権設定時料率の変更は政府による決議にすぎず、議会で法律が変更されたわけではありません。また、日本の特許権者の権利行使を制限するものではありません。

今後も引き続き注視の上で、情報提供させていただきます。
 
【JETRO発表】
 <ジェトロ(日本貿易振興機構) PDFへのリンク>
 https://www.jetro.go.jp/ext_library/1/_Ipnews/europe/2022/20220309.pdf


 
記事担当者:外国統括管理部 設楽 修一
 
弊事務所においては、各銀行や各現地代理人を通じて情報収集に努めております。手続きについてご不明な点やお困りの状況がございましたら、弊事務所へお問い合わせいただきますようお願い申し上げます。
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