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早期審査制度の有効活用
~早期審査制度を利用した「コストダウン」、「出願情報の戦略的秘匿」、「外国特許審査の加速」等の方法について~

2019/12/26

早期審査制度の有効活用

 早期審査制度を上手に活用することで、「コスト削減」、「出願内容の戦略的秘匿」、「外国特許審査の加速」等のメリットを得ることができます。この記事では、これらを実現する方法についてご説明します。

1.特許の審査期間

 日本特許庁に出願された特許について、審査請求から1回目の通知(拒絶理由通知)が来るまでの平均期間は約9ヶ月、審査請求から査定が下るまでの平均期間は約14.1か月です。
 

  一次審査通知までの期間(月) 最終処分期間(月)
JPO 9.3 14.1
USPTO 15.7 24.2
EPO 4.8 24.9
CNIPA 14.4 22.0
KIPO 10.4 15.9
(特許庁 特許行政年次報告書2019年版より) 

 

2.早期審査制度とは

 審査請求から1回目の通知までの所要期間を、2ヶ月程度まで短縮する制度です。
 

  • 例えば、出願と同時に審査請求を行えば、1回目の通知の内容が特許査定であった場合、出願から2ヶ月程度で査定を受けることが可能となります。
  • また、1回目の通知が拒絶理由通知であった場合でも、迅速に応答することで、出願から6か月程度で特許査定又は拒絶査定を受けることが可能となります。

3.出願内容の戦略的秘匿

 

 公開公報 (出願から1年6ヶ月後に発行) の発行準備前に、 拒絶査定が確定した場合は、出願内容が公開されません(方式審査便覧54.51)。これを利用して、早期審査請求によって公開前に拒絶査定を受けることで、拒絶となった出願内容が公開されません。
 すなわち、出願内容を戦略的に秘匿することができることになります。
 
これにより、以下のようなメリットが生じます。
(メリット1)権利化できなかった場合は、出願内容を公開せずに秘匿できる。
例えば、「権利化されるなら公表してもよいが、権利化できないのであれば公表したくない」といった発明については、早期審査は非常に有効となります。例えば、工場内の設備に関する発明などが想定されます。
 
(メリット2)拒絶査定の内容を踏まえて、新たに出願できる。
この場合、新たな出願では、あらかじめ拒絶理由となる先行技術がわかっているため、拒絶理由を回避した出願を行うことが容易となります。

4.早期審査制度を利用したコスト削減戦略

 

(戦略その1)外国出願の取捨選択によるコスト削減
日本出願を基礎に、外国へ出願する場合、優先権期限は日本出願の日から12ヶ月となります。早期審査制度を活用することで、12ヶ月よりも前に、日本出願の審査結果を得ることができます。そのため、日本出願が①拒絶されてしまった場合、や、②審査の過程で権利範囲が限定されてしまった場合、にはこれらの結果を踏まえて外国出願の要否を判断することができます。
(メリット)
権利化の見込みがない出願や、あまりに権利範囲が限定されてしまうような出願について、外国出願を取りやめることで、不要な外国出願にかかるコストを削減することが可能となります。
 
(戦略その2)外国出願の中間コスト削減
外国出願の際に、既に日本出願の審査の経緯と結果が分かっているため、日本出願の審査結果を外国出願に反映させることで、外国出願におけるオフィスアクションの回数を減らすことができます。
(メリット)
比較的費用が高い外国特許庁への応答の回数を減らすことで、パテントファミリー全体で見たコストの削減が可能となります。
また外国特許庁への応答の回数の予測が立てやすくなるため、予算の予測が立てやすくなります。

5.外国特許審査の加速


 早期審査制度と特許審査ハイウェイ(PPH)制度を組み合わせることで、外国特許出願の審査を加速させることができます。
 PPH制度とは、1つの国で先に特許査定を受けている場合に、他の国への対応する特許出願について審査を加速させる制度のことです。
 これを利用して、まず、日本特許出願について早期審査制度の活用により審査を加速させて特許を取得します。次いで、対応する外国出願についてPPH制度を利用することで、外国での早期権利取得も実現することができます。

6.早期審査制度を利用するための手続き

 出願人が製造業であるか小売業等であるか、又、は大企業であるか中小企業であるか、等によって必要な手続きや費用が異なります。本制度の活用をお考えの際は、事前にご相談下さい。


 
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