マルチマルチクレーム法改正
2021/01/18(更新:2022/03/03)
1.『マルチマルチクレーム』が禁止される見込みです
現在、特許庁の中で組織されている「産業構造審議会 知的財産分科会 基本問題小委員会」において、「料金制度に付随する論点について」の項において、『マルチマルチクレーム』の廃止が検討されています。
この廃止に関しては、小委員会の中のJIPAからの参加委員の方々からは、特段の反対意見は出されていません。また、単に料金設定の手法についての改訂ですので、そのまま承認される見込みです。
2.マルチマルチクレームとは?
下記のクレームを考えてください。
- 【請求項1】Aを含むX。
- 【請求項2】Bを加えた請求項1記載のX。
- 【請求項3】Cを加えた請求項1又は2記載のX。(←マルチクレーム)
- 【請求項4】Dを加えた請求項1、2又は3記載のX。(←マルチマルチクレーム)
複数の請求項を引用する請求項3を「マルチクレーム」といい、マルチクレームと他の請求項とを同時に引用する請求項4記載の発明を「マルチマルチクレーム」といいます。
請求項4記載の発明は、
「AD」「ABD」「ACD」「ABCD」
の4つの発明が含まれることとなっています。
請求項の数によって、審査請求料が決定されているので、請求項1は1発明の審査で足りますが、マルチマルチクレームを使用した請求項4は、1請求項でありながら4発明の審査が必要となりますので不公平になるという考え方があります。
このことを理由として、この「マルチマルチクレーム」の記載は、アメリカ・中国等の一部の国においては認められていません。
3.今後のクレーム記載の方法は?
マルチマルチクレームが禁止された後に、従来と同様の権利範囲を目指す場合には、以下のように、マルチクレームに分解した形式でクレームを記載する必要があります。
- 【請求項1】Aを含むX。
【請求項2】Bを加えた請求項1記載のX。
【請求項3】Cを加えた請求項1又は2記載のX。(←マルチクレーム)
【請求項4】Dを加えた請求項1又は2記載のX。(←マルチクレーム)
【請求項5】Dを加えた請求項3記載のX。
とすることによって、「マルチマルチクレーム」がなくなり、かつ請求項4で、「AD」「ABD」が審査対象となり、請求項5で「ACD」「ABCD」が審査対象となり、前記したマルチマルチクレームの請求項4と同一の審査対象とすることが可能です。(但し、審査請求料等が1請求項分増加します。)
4.今後の新規出願時の対応について
これから新規出願される特許の大半は、審査開始は数年後となります。したがって、審査される際には、既に「マルチマルチクレーム」が廃止されている可能性が高くなります。
これまで通り、「マルチマルチクレーム」形式で出願された特許については、他の拒絶理由の有る/無しに拘わらず、上記の理由からすべて拒絶理由を受けてしまうこととなります。
そこで、審査の迅速化や中間応答に要する手間の削減を目的に、今後の出願の際は、あらかじめ「マルチマルチクレーム」を避け、前述したような「マルチクレーム」への分解を行った形式で記載しておくことも選択肢の一つとなります。
(2022/03/03追記)
特許庁より、マルチマルチクレームへの制限については、令和4年4月1日施行後に出願された特許出願及び実用新案登録出願に適用される旨の発表がありました。
参考:<マルチマルチクレームの制限について>
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/letter/multimultichecker.html