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特許権者における広告表示の留意事項について(景品表示法上の留意点)

2018/09/13

1.はじめに


審査中の特許出願が特許査定を受けて登録されると、特許に係る実施品(特許製品)に対しては登録の事実を示すべく特許番号を表示することができます(特許法187条)。一方、特許製品の包装や広告に特許番号のみならず特許製品の効果や効能等を表示する場合には注意が必要です。特許法における特許査定は、特許庁による特許を認める旨の行政処分に過ぎず、広告表示は他の法令により規制されているからです。

2.景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)について

広告表示を規制する一般法として、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)があります。同法では、5条1項各号において、一般消費者を誤認させる不当表示を規制しています。
 

① 商品・役務の品質などの内容につき一般消費者を誤認させる優良誤認に係る表示(1号)
② 商品・役務の価格などの取引条件につき一般消費者を誤認させる有利誤認に係る表示(2号)
③ その他の一般消費者に誤認される表示であって内閣総理大臣が指定する表示(3号)

 
特許製品の包装や広告に効果や効能等を表示する場合は、5条1項1号の「優良誤認」に注意する必要があります。
 
※景品表示法は、独占禁止法の特例法として昭和37年(1962年)に制定され、不当表示について「公正な競争を阻害するおそれ」のある行為として規定されていました。しかし、平成21年(2009年)9月に各省庁に分散されていた消費者行政を一元的に所管する消費者庁が設立されると、同法が改正されるとともに、所管官庁が公正取引委員会から消費者庁に移管されました。この際、法目的が公正な競争の確保から一般消費者の利益の保護に改められました。

3.景品表示法違反事例

 
特許に係る広告表示が、景品表示法違反(5条1項1号(旧4条1項1号)違反)となった事例を紹介します。
 
煙草の喫味及び成分調整剤事件 平成22年11月26日 東京高裁判決
 
 
(概要)
喫煙者が体内に吸い込むたばこの煙(以下「主流煙」という。)について、「ニコチンをビタミンに変える」との表示が不当表示に該当するとされ、公正取引委員会(当時)から排除命令(行政処分)を受けました。
表示行為者は、公正取引委員会に対して当該排除命令の取り消しを求める審判を提起しました。結果は、請求棄却審決となりました。表示行為者は、棄却審決に対して審決取消訴訟を提起しましたが、結果は請求棄却判決となりました。
本件審判及び訴訟において、表示行為者は、表示の裏付けとなる資料として特許公報(公告公報)を示しましたが、以下の通り否定されました。
 
(判決要旨)(審決も同じ要旨)
「特許公報は、出願公開された事実を示すものにすぎず、特許公報のみをもって実体審査を経て特許を受けたものということはできない。特許庁における審査は、特許出願された発明について、特許法上の要件(特許法第29条)である新規性、進歩性、産業上の利用可能性等について、あるいは明細書の記載事項、出願人に関する要件等の手続事項に関する不備の存否等について審査するものであり、その結果,拒絶の理由を発見することを目的としていることから(特許法第51条)、 特許庁により発明に特許を受けたとしても 、それは出願された特許について拒絶の理由がなかったと判断されたことを示すにすぎないのであって、発明の効果・性能に関してすべて実証されていることを担保するものでない。また、 特許公報に特定の試験の結論が記載されている場合においても、その記載自体が当該試験の客観性、信頼性等を担保するものではなく、特許公報自体が発明の効果・性能のすべてを実証するものとはいえない。
※下線は弊所が付したものです。
 
(解説)
裁判所は、特許庁における審査は、発明の効果・性能に関してすべて実証されていることを担保するものでないと判断しました。また、裁判所は、特許公報自体が発明の効果・性能のすべてを実証するものとはいえないと判断しました。

4.広告において表示した効果の根拠について

上記のとおり、特許公報に効果が開示されているからといって、特許の実施品に係る広告で謳える訳ではありません。
 

ここで、消費者庁では、ガイドライン「不実証広告規制に関する指針」において、事業者からの「提出資料」が効果効能表示の裏付けとなる合理的な根拠に該当する場合を以下のとおりと規定しております。
(1)提出資料が客観的に実証された内容のものであること
(2)表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること
(1)については、さらに以下のとおり規定しています。
① 試験・調査によって得られた結果(例:JISなどの公定法による試験)
② 専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献(特定の専門家等による特異な見解は認められない)
したがって、特許公報に表示の根拠とされる具体的な試験結果についての記載があるとしても、上記の(1)及び(2)の要件に該当しなければ不当表示に該当するおそれがあります。
 
以上を踏まえると、特許公報を広告において表示した効果の根拠として使用する場合、以下の条件を満たす必要があります。
 

・ 特許公報に記載された効果が、公定法等の試験により実証されていること。
・ 広告において表示した製品が特許の実施品であること。

5.まとめ

不当表示となるか否かの判断は、表示行為者の主観ではなく一般消費者が受ける心証で決まります。したがって、同業者がやっている表示だから良いだろうという判断は誤りです。
弊所では、権利化に関する御相談と共に権利化後の広告表示の御相談も受けております。お困りの点があれば御相談頂ければと存じます。


 
記事担当者:特許3部 石田 理
 
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