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「ノウハウと特許の使い分け」シリーズ
  第4回 特許出願をしないリスクとは?

2020/08/01

1.見ても理解できない秘密技術は特許出願しないことが原則です

 前回は特許出願をする場合の危険性について説明しました。今回は逆に特許を出願しない場合の危険性について説明します。自社で生まれた優秀な技術やノウハウについて、特許を出願しないことを決めた場合についてです。販売した自社製品をライバル企業が分析しても製造技術を解明できない場合などは、特許出願することなく、ノウハウとして秘密を保つのが自社にとって有益であることがあります。
 日本企業が欧米の技術をさかんに導入していた時期には、欧米の企業が製造した製品を見ても同品質の製品を製造することは出来ず、結局のところ大金を払って技術導入するしか他に方法がないことが多くありました。公開された特許明細書や図面を見ても、実際の製品を作るための製造技術や開発レベルとはかなりの格差があり、日本の技術では到底同じ製品は作れないことが多くありました。

2.技術優位な期間が何年かを判断することが大切です

 特許出願することなく、ノウハウとして秘密を保持するための技術レベルは、ライバル企業が何とか同じ製品を製造しようと苦労しても、数年間は難しいだけの先を行く先行優位性がないと意味がありません。特許出願したアイデアは1年半は公開されませんので、この先行優位性が1年とか2年ではノウハウとして秘匿する価値はなく、最低でも4~5年以上である必要があります。しかし、昔と違って現在では、分析技術が格段に進歩しています。また、難しい可能技術を売り物にしている外注専門企業もあります。このため、他社が同じ技術を開発するには、最低でも5年間を要すると想定していても、以外に早く追いついて来ることもあります。
 また、新しいアイデアをノウハウとして秘密状態に維持するためには、その秘密が社外へ漏れないように万全の体制を築く必要があります。ノウハウが社外へ一度でも漏洩すると、それまでの努力が水泡に帰します。しかも、秘密が漏洩しても、その事実が判明しない場合がほとんどです。アイデアは形がありませんので、身近にある自分の財産と違って、盗まれたことがわからないのが知的財産の恐ろしいところです。日本トップの企業から、最先端の鋼板製造技術が盗まれた事件でも、疑ってはいましたが事実が判明したのは数年を経過してからでした。しかも、それは偶然に他国の裁判での他人の証言でした。

3.秘密を保持し続けてもリスクはあります

 さらに問題なのは、特許出願しないでノウハウとして秘密化を計画した場合に、同じ技術が偶然に他社から特許出願された場合は、自社の製品販売が他社特許権の侵害となり継続できなくなることにもなります。
 このように、新しいアイデアを特許出願しないでノウハウとして秘密扱いする場合には、特許出願をする場合に比べて、何倍もの神経を使うものです。そのストレスを考えても特許出願しないで秘密扱いにする価値があるかどうか、知的財産担当者は重要な決定をしなくてはなりません。


 
記事担当者:知財ソリューション部
 
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