ニュース

「ノウハウと特許の使い分け」シリーズ
  第9回 ノウハウ漏洩防止のための契約対応

2021/03/01

1.ノウハウの封じ込め

 書類や部品が社外へ持ち出される場合や、打合せでの説明内容に、ノウハウ漏洩のリスクがあります。秘密書類などは社外へ持ち出さないことが好ましいのですが、部品製造の外部委託や共同開発先との打合せなどでやむを得ない場合があります。部品供給先や材料納品先からのわずかな情報をヒントに、競合企業は我が社が何をしているか、何を計画しているかの重大なノウハウを推測する場合もあります。
 このような場合には、あらかじめノウハウを他へ漏らさないように契約を結ぶことで、効果的にノウハウを守る障壁が高まるといえます。

2.契約の種類

 ノウハウを守るための契約には、研究開発や製品製造の段階に応じて、様々な種類があります。研究開発の初期には、秘密保持契約書(NDA)や共同研究契約書があります。また、技術移転の初期には、実施権契約書や技術支援契約書があります。社外企業の協力を得た製造時には、材料購入契約書や製造委託契約書があります。これらは一例であり、研究開発、試作、試験、営業、生産、など製品販売にかけて、そのほかに多くの契約書を交わす必要性に迫られます。
 これらの企業や組織とのコミュニケーションごとにノウハウ流出のリスクが存在していますので、ノウハウ防衛の条項を各契約書内に明記します。契約相手が、我が社のノウハウを厳格に管理し、不用意に拡散、漏洩しない約束をしてもらうわけです。

3.ノウハウ保護契約のメンテナンス

 契約書によって我が社のノウハウ流出を防止しても、それで万全というわけにはいきません。その契約内容が確実に実行されているかの保証はありません。契約書で秘密漏洩は防止できても、その秘密情報に基づいて発明がされれば、特許は相手方の権利になり得ます。契約の目的が達成された後は、提供した資料やサンプルを返還してもらわないとリスクが解消されません。何回かの技術改良がなされる場合には、その都度、旧タイプの設計図やサンプルについてのノウハウ流出があり得ます。
 また、契約内容の遵守意識は時間経過と共に低下しますので、定期的な内容点検と注意喚起が必要です。状況が変わった場合には、再度の契約書を交わすなど、契約書全般のメンテナンスが必要ですが、そこまで対応していない実情が多く見受けられますので、注意する必要があります。


 
記事担当者:知財ソリューション部
 
本件に関して、ご不明な点などございましたら、下記お問合せフォームよりお気軽にお問い合わせ下さい。
(お問合せの際は記事のタイトル、弊所 担当者名をご記入いただくとスムーズな対応が可能です。)